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世界のラグジュアリーが注目する、日本固有の木材「檜」

香り、手触り、空間に漂う静けさ。日本固有の木材である檜が、車、空港、建築といった世界の最上級の文脈で、五感に訴えるラグジュアリーとして用いられ始めている。

岩肌の壁と木の格子に囲まれた浴室。湯気の立つ木の浴槽の向こうに、夕暮れの海と水平線が広がる
写真:NOT A HOTEL

世界のラグジュアリーが注目する、日本固有の木材「檜」

香り、手触り、空間に漂う静けさ。日本固有の木材である檜が、車、空港、建築といった世界の最上級の文脈で、五感に訴えるラグジュアリーとして用いられ始めている。

岩肌の壁と木の格子に囲まれた浴室。湯気の立つ木の浴槽の向こうに、夕暮れの海と水平線が広がる
写真:NOT A HOTEL

ラグジュアリーの定義が変わりつつある現在、その中心に静かに浮かび上がっている素材がある。日本固有の木材である檜ひのき日本固有の針葉樹。木目が細かく狂いが少なく、水や湿気に強く、すがすがしい香りを持つ。社寺の建築や風呂、桶などに使われてきた。素材事典で見る(ヒノキ)だ。

それは、華美な装飾や視覚的インパクトによって価値を誇示するものではない。香り、手触り、空間に漂う静けさ──五感を通じて体験されるラグジュアリーとして、檜は世界の最上級の文脈に入り込み始めている。

車内空間に持ち込まれた、檜という感性

メルセデス・マイバッハ S680 エディション エメラルドアイル

世界でも限られた台数のみが生産された、メルセデス・マイバッハ S680 エディション エメラルドアイル。この特別なモデルでは、内装素材や仕立てと同じレベルで、車内の香りが設計されている。

その専用フレグランスには、檜を含むウッディな要素が取り入れられている。それは強く主張する香りではなく、キャビン全体に奥行きと落ち着きを与えるものだ。

茶色の革張りの後部座席。テーブルの上で「Edition Emerald Isle」と刻まれた革の箱が開き、絵柄の入った立方体と二つの銀色のキーが収められている
写真:メルセデス・ベンツ

マイバッハにおいて香りは、移動空間を単なる車内から、思考を整えるための私的空間へと変換する役割を担う。そのために選ばれた素材が檜であるという事実は、檜がもはや「日本的素材」にとどまらず、普遍的な感性価値を持つ存在として扱われていることを示している。

空港という非日常空間に漂う、檜の気配

JAL ファーストクラスラウンジ

空港は、常に時間と人が交錯する緊張感の高い場所だ。その中で、ごく限られた人々のために設えられたファーストクラスラウンジでは、檜の香りが空間の一部として用いられている。

明るい木の壁と天井に囲まれた空間。白い調理服の料理人二人が立つカウンターの手前に、オレンジ色の椅子の席が並ぶ
写真:JAL

ラウンジ内に足を踏み入れると、意識しなければ気づかないほどの、ほのかな檜の香りが漂う。それは、日本的であることを誇示するための演出ではない。

長距離移動を前にした身体と精神を、静かにニュートラルな状態へ戻すための環境設計として、香りが存在している。季節や時間帯に応じて香りの表情を変えることで、空間は常に流動的で、生きたものとして保たれている。

滞在体験の核としての檜

NOT A HOTEL「NIGO HOUSE」

建築・滞在体験の分野において、檜はより直接的な形でその価値を発揮する。

NOT A HOTEL が手がけた「NIGO HOUSE」では、浴室に檜風呂が採用されている。断崖と水平線を望むロケーションの中で、自然の荒々しさと、精緻な職人技が交差する空間だ。

檜風呂は、単なる日本的意匠ではない。湯気に溶け込む香り、肌に触れる木の温度、そして時間の流れそのものが、滞在体験として設計されている。

ここでの檜は、建築素材であると同時に、ウェルネスそのものを構成する要素となっている。

日本固有の素材が、世界の価値観と交わるとき

車、空港、建築。領域は異なれど、檜は共通して感性の深度を高めるための存在として用いられている。

それは視覚的に主張することなく、説明を必要とせず、ただ空間や時間の中に溶け込みながら、体験の質を底上げする。

檜は今、「日本の伝統素材」から「世界が理解し始めたラグジュアリーの言語」へと変わりつつある。

静かで、控えめで、しかし確実に。